- 2009年6月21日 23:55
- 読書
「本との出会い」ってあると思いませんか?少し大げさですが、運命の人との出会いのように、もっと早く出会いたかったと思えるような本は、そんなにたくさんありません。つい最近、私の人生における「2人目の運命の人」(笑)のような本との出会いがあったので、紹介しようと思います。「仕事は楽しいかね?」のように、物語に沿って展開するお話しの形式で書かれた本です。
内容は、転職してザグラム社に入社した上級幹部社員の「私」が、副社長のバドから直接研修を受けるという形式で進みます。そう、「私」は、もちろん、読者である私の替わりです。その「私」の視線で書かれているのが、この本です。
たまたま知ったこの本を、面白そうだと思い、「監修者まえがき」、「目次」と読み進めて、本文に入った途端、正直な気持ち「ああ、物語仕立ての本か」と少しがっかりしました。なぜなら、要点がぱっぱとまとめられていて、表や図も多く用いられているビジネス書に比べて、わかりにくそうだし、作者の言いたいことにたどり着くまでに時間がかかりそう。そんな風に思いました。そして、本文を読み始めると、たった5ページでそんなことはすっかり忘れて、どんどん引き込まれ、すっかり私は主人公の「私」になっていました。
今回紹介する「自分の小さな「箱」から脱出する方法」は、まさに物語り調の本だからこそ、「2人目の運命の人」になった気がしてなりません。
自己欺瞞(じこぎまん)とは?
こんな経験はありませんか?
ふと、相手に何かしてあげたいと思ったのに、自分本位な理由でしなかったこと。
職場で、家庭で、友達付き合いで・・・。例えば、私が仕事から夜遅くに帰ってくると、部屋が散らかったままになっていました。それをみて私は、「片付けてから寝よう」と思いました。そして、遅い夕食を取ったり、風呂に入ったりしていると、仕事の疲れもあり、面倒くさくなり片付けないまま寝ました。そうすると、嫁さんに対して、「なぜ片付けないで寝たんだろう」とか「自分はこんな遅くまで仕事をして帰ってきてるのに・・・」などと考えてしまった。そんな経験です。
自分を正当化したり、相手の方に非があると考えるようになる、つまり現実を歪めて見るという状況です。この本では、この状況を「箱の中にいる」と言います。
思い当たりませんか?
いつもこのように相手や自分を観ている人は少ないと思いますが、何かの拍子にすっと「箱」に入ってしまうことがあるのではないでしょうか?この本では、以下のようなプロセスと説明しています。
- 他の人のためにすべきだと感じたことに背く行動を「自分への裏切り」と呼ぶ。
- 自分の感情に背くと、自分への裏切りを正当化する視点から、周りの世界を見るようになる。
- そうすると、現実を見る目が歪められる。
- 従って、自分の感情に背いた時に、「箱」に入る。
- 時が経つにつれて、いくつかの箱を自分の性格と見なすようになり、持ち歩くようになる。
- 自分が箱に入ることにより、他の人たちも箱の中に入れてしまう。
- 箱の中にいると、互いに相手をひどく扱い、互いに自分を正当化、共謀して互いに箱の中にいる口実を与え合う。
3番目の見る目が歪められるということが、即ち「欺瞞(ぎまん)」です。「あざむくこと、だますこと」という意味です。見る目を歪めることで、自分をだまし、そして「箱」へ続いていくのです。
「心のあり方」がポイント
闘争的か、平和的か
一言で言うと、この本は「心のあり方」について書かれている本です。そして、先の述べた「箱の中にいる状態」であれば、心は闘争的な状態であり、「箱の外にいる状態」であれば、心は平和的な状態であるのです。
先の部屋が散らかっている例で説明すると、私が嫁さんに対して「なぜ片付けないで寝たんだろう」とか「自分はこんな遅くまで仕事をして帰ってきてるのに・・・」などと思っているのは、闘争的な心だからです。しかし、同じ状況でも、「あ~今日は嫁はんも仕事で疲れてたんだ」とか「彼女の方が気を遣う仕事やから、そうでもない私が片付けるか!」と思って片付けるという選択もできたはずです。つまり、そんな時の私の心は平和的な状態でいられるのです。
こんな話を聞いて、「心のあり方が大切で、平和的な状態に維持しておくのがよいのは当たり前。」と思われる方も多いと思います。私も、目次を読んだ時には、そう思いました。そうなんです、こうやって解説のような文章を読むと、「心のあり方」という普遍的なテーマなだけに、当たり前のように感じてしまうのです。
この本の、ここがオススメ!
この本のおすすめは、2つです。
1つめ:心について、とてもシンプルで根本的な内容であること
心理学や人間関係に関する分野は、興味があるので、少し本を読んだりしたこともありますが、こんなに根本的でシンプルな説明はなかったように思います。
自分の心が今、平和的なのか、闘争的なのか、それに注意するだけで、対人関係やひいては今後の人生に影響を与えると、そんな風に思います。
2つめ:体験的な読書ができること
この本のエッセンスだけを読んだり、聞いたりしたら、わかっていると感じてしまうと思うのです。どこかの書評で、「なぜ簡単なことをわざわざ難しく書くのか」といったことを言われている方もいました。しかし、簡単なことを頭でわかっても、すぐに行動に移せるかというと、私はそうは思いません。仕事から夜遅く帰ってきて、家の中が散らかっていたら、やはり「なんで散らかったままにして・・・」と思うことでしょう。世の中には、それこそ星の数ほどのいろんなセミナー、研修があり、それでもなくならないのは、頭でわかったことが、すぐ行動のレベルにまで落とし込むことが難しいからではないでしょうか?
孔子の言葉に以下のようなものがあります。(原文の中国語は知りません。なぜか英文です。私の訳ですが、もっと適当な訳し方があったら、ご指摘ください。)
- I hear, and I forget.(聞いたことは忘れる)
- I see, and I remember.(見たことは覚える)
- I do, and I understand.(体験したことは身に付く)
孔子の3番目の言葉は、裏返すと「体験しなければ身に付かない」となります。私は本が好きで、活字に触れない日はほとんどありません。そんな私の悩みの一つは、読んだ本を実生活に活かしきれないことです。先日の会でも同じ悩みを抱えた読書家の人たちとお会いしました。その悩みに一つの解決方法が、この物語り仕立ての文章ではないかと思えたほどです。
この形式では、フィクションと同じようにどうしても主人公に感情移入してしまいます。つまり、文章が、心に訴えかけてくるのです。いわば、読者が主人公として、この本に書かれている内容を追体験することで、理性ではなく、感性に訴えかけてくる。つまり、頭ではなく、心(ハート)に訴えかけてくるから、この本が私の「2人目の運命の人」になったのはないかと思います。心に響いたんです。"I'm moved."まさに、心が動かされたのです。心に染み入ってきたという表現が、一番近いかもしれません。
そして、この本を読んで、私の新たに起こした行動
嫁さんに、この本を勧めた
まず、5分の1ほどを読んだところで、嫁さんにこの本の強烈に勧めました。彼女も本を読むのが好きなのですが、読む分野が異なるため、あまりお互いに本を勧めることをしていませんでした。しかし、今回は、居ても立ってもいられず、まくし立てるように読んだところまでのことを喋りました。
「ふ~ん、そうなんや。」という言葉が返ってきたら、それこそ、「箱」に入っていたかもしれませんが、珍しく「へえ、面白そうやね。」との言葉。うれしくなりました。おかげで、「箱」の外に留まることができました。(笑)
相手のために何かしようと思ったときは、素直に実行するようにした
自分の中に湧き出た「相手のために何かしようと思った感情」に従うようにしました。具体的には、夜帰ってきて部屋が散らかっていたりしていたら、できる範囲で片付けたり、食洗機に食器をセットしたり、そんなことを実践しています。
すると、とても気持ちいいのです。心が軽いというか。自己欺瞞に陥らず、自己正当化するためのエネルギーが必要ないので楽なのかもしれません。
周りの人たちと接するときに、今の自分の「心のあり方」に注意を向けるようになった
「今は闘争的だから、平和的になってから、発言しよう!」などという余裕がありませんから、ついつい心が闘争的でいて、「箱」に入ったままでいることもしばしばです。しかし、気づくことができる回数が増えました。
ただ、そうやって気づいてくると、冒頭に書いた箱に入るプロセスの5番目「時が経つにつれて、いくつかの箱を自分の性格と見なすようになり、持ち歩くようになる。」ということにも気づくようになってきました。
まだ明確にはなっていませんが、「あれ?今の感情って、箱に入ってるからとちゃうか?」などと思うことがあるのです。
そして、この本の、もうひとつのオススメ!
解決方法が示されていること
ここまで読んでいただいた方は、「箱に入ってるコトがわかったら、どうしたらええねん?」と大阪弁で思われたかもしれません。そう、私も同じように思いました。そして、この本には、ちゃんと解決方法が示されています。それもごく簡単な方法が。
自分が間違っているかもしれない
そう思うことです。それが、箱から出るキッカケを与えてくれます。
夜遅く帰ってきた私が、散らかっている部屋を見て、嫁さんに対して「なぜ片付けないで寝たんだろう」と思ったことを、私の解釈が間違っているかもしれないと疑ってみるのです。つまり、なぜ片付けないで寝たのか、ではなく、片付けないで寝た理由が何かあるのではないか?と視点を変えてみたらいいのです。
日頃の「心のあり方」の指針が示されていること
ラストから5ページ目に、研修の最後にザグラム社の副社長バドが、主人公の「私」に渡すカードが登場します。その内容が「知っておくべきこと」「知ったことに即して生きること」という二つのタイトルとそれに続く短いリストです。
このカードをワープロにして手帳に挟んでおくか、携帯のメモ帳などに入力しておき、時々読み返すだけで、その後の人生が変わると言っても大げさでないくらい、大切なことです。
簡単な当たり前のことだからこそ、何度も心に刻みこむ。それが大切なのではないでしょうか。一部だけ記しておきます。
知ったことに即して生きること
- 完璧であろうと思うな、よりよくなろうと思え
- すでに知っている人以外に箱という言葉を使うな。自身の生活にこの原則を活かせ
- 箱の中の他人を責めず、自分が箱の外に留まるように
- 他人の間違いの点には注目せず、どのような正しいことをしたら手を貸せるか考えろ
- 他人が手を貸してくれているか見ず、自分が他人に貸せているか気をつけろ
最後に
読んでいる時に、私の中で鳴っていた声を書いて終わります。
- これで、残りの人生が変わる!
- 今までの人生、もったいないことした!
- ほんとに、ほんとに、出会えてよかった!
- もっと早く出会いたかった!
- 私より年下の人に、ぜひ、一年でも早く読んで欲しい!
最後に、この本の存在を教えてくれた、かつ、教えたと意識していないであろうkakobonさんに感謝します。この本との出会いをくれて、ありがとう!
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